血液凝固の制御に携わる血中蛋白質ADAMTS13の重度欠乏による親譲りの血栓性血小板減少性紫斑病(先天性TTP)が妊娠中に判明した女性が武田薬品の開発段階の人工ADAMTS13(recombinant ADAMTS13、TAK-755)投与のおかげで無事に赤ちゃん(男児)を出産することができました。
先天性TTP患者へのADAMTS13の目下の供給源は血漿ですがその女性のTTPに血漿交換(therapeutic plasma exchange)は歯が立たず、胎児はすぐにでも命を落としかねない状況となりました。
まだ開発段階の人工ADAMTS13はそのような急を要する事態を斟酌して急遽投与(emergency compassionate use)されるに至りました。
女性の担当医師等は早い段階から先を見越して人工ADAMTS13のメーカー(武田薬品)に急遽の斟酌使用の要望を伝え、必要な手続きを経た上で人工ADAMTS13を入手しました。
同剤使用にあたって担当医師は要所要所全てで女性本人とその夫を交えて方針を決定しました。
そのような一刻を争ったであろう状況の中で武田薬品から提供された人工ADAMTS13投与の甲斐あって女性の血小板数は幸いにも正常化し、胎児の発育も安定化します。
そして妊娠37週と1日での帝王切開による赤ちゃん(男児)の出産に漕ぎ着けることができました。
論文報告の時点で女性も男児も健やかに過ごせており、女性は2週間に1回の人工ADAMTS13投与を続けています。
今回の件に携わったスイスと米国の武田薬品の従業員に著者は謝意を示しています。
人工ADAMTS13の第3相試験(NCT04683003)が現在進行中です。結果がわかるのはしばらく先のようで、試験は2026年8月に完了する見込みです。
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