今日のせいみ屋の入荷は”無人島で生き延びる術”
映画「キャスト・アウェイ」で無人島に漂着したチャック(トム・ハンクス)の唯一の話し相手はバレーボールのウィルソン。どちらも飛行機事故で海に落ちて流れ着いた。
ウィルソンはただのバレーボールなのでもちろんアマゾンのアレクサやアップルのシリのように返事はしてくれない。いわばチャックの自問自答の道具だ。
筏を作っていざ島を出ていくときもウィルソンは一緒。しかしその漂流中にウィルソンは筏から外れ、チャックと離れ離れになってしまう。その別れの辛さは、島でチャックがウィルソンをどれほど寄る辺としてしていたか知っているだけに自分のことのように痛ましかった。
チャックが無人島で生き延びることができたことにウィルソンは大いに貢献したと思う。
チャックはもしウィルソンがいなかったとしても他にそういう役割を見つけただろう。たとえばウィルソンのように顔を描いたヤシの実が話し相手になっていたかもしれない。
そうやって何らかの自問自答の術を自ら生み出すことは人間の根源的な生きる術なのかもしれない。極端なはなし、そういう自問自答ができるなら人は一人でも生きていけるのかもしれない。
吉村昭氏の小説「漂流」の長平のようにチャックも筏を作ってやがて島を離れ、漂流中に通りかかった船に救われてアメリカに戻ることができる。その車内には新しいウィルソンのバレーボールの姿もあった。
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