2週間前のにっぽん応援隊の動画より、
「何を言うとるんや 斎藤をとことん追い詰めるチャンスやないか」兵庫県の斎藤元彦知事への告発文を作成した元局長に自民党県議や県OBが放ったとされる言葉。
その後に元局長は強い圧力を受けて自ら命を絶った。
斎藤氏はパワハラや贈答品のおねだりに関する内部告発で失職。全国民の敵と言われるほどの人物となった。5期20年にわたり県知事を務めた井戸敏三氏との長年の対立が浮き彫りになっている。
斎藤氏は2020年の兵庫県知事選で金沢氏に25万票以上の差をつけて当選。就任直後から井戸路線との決別を鮮明に打ち出す。それが県庁職員や関係者の反感を次々に招いた。
斎藤氏は井戸時代の隠れ負債に踏み込んだ。1500億円規模もの地域整備事業と分収造林事業の負債の返済に最初に着手。
地域整備事業は民間による乱開発を防ぐために県が先回りして土地を買い取って開発することである。バブル崩壊後の地価下落で負債が拡大。
分収造林事業は木材需要が高かった時代に県が植樹し、売却益を土地の所有者と折半すること。木材が売れなくなるにつれてこちらも負債が膨らんだ。
県の職員によるとそれらの事業で取得した帳簿上の価値と実際の市場価値との差が非常に大きいことは井戸県政での最大のタブーだった。もしその事実が明るみに出れば20年間兵庫の殿様として絶対的な地位を築いた井戸氏の名声に大きな打撃。それは公然の秘密だった。
しかし斎藤氏は負債の返済開始を宣言。それは正論だがこれまで触れずにいた問題に手を付けられたことで財政担当の職員やOBらは長年人目に触れずにいた恥部を付かれたような気持ちになった。
なかには県庁にわざわざ来て現役の職員に不満を言うOBもいた。
斎藤氏はさらに外郭団体役員の定年規定を厳格に適用し始めた。内規での定年は65歳だが、井戸政権では実質的に70歳以上まで延長されていた。それら外郭団体の役員職は県庁幹部の天下り先として長く機能していた。
斎藤氏の方針は脱井戸であり、外郭団体の役員に就任しても県職員OBとの飲み会には一切出席しなかった。そして定年の厳格な運用が始まり、(天下り役員は)老後の収入である年収300万円以上を手にできなくなり、まさに死活問題となった。
取材で県庁職員や関係者は斎藤氏を正論を貫く人だと語っている。地元有力者との飲み会でのコミュニケーションは斎藤氏にとって苦手だったらしい。
昨年8月に発表された兵庫県立大学の入学金や授業料の無償化は自民党勢力の反発を招いた。自民党内で教育分野で影響力を持つベテラン議員が激しく反対した。その議員にとって高等教育の無償化は自身が達成できなかった長年の目標だった。ところが40代の新参の斎藤氏が事前の根回しもせず進めようとした。おれを差し置いてなにをするんだと怒り、その議員は反斎藤氏の急先鋒となった。
その議員を含む自民党国会議員は当初全員が斎藤氏を支持していた。しかし県立大学無償化政策により次々と支持するのをやめていった。
兵庫県庁内での斎藤氏への反発は、2021年12月に県庁舎の建て直し中止を表明したことが大きく影響している。財政厳しい状況で県庁舎だけを建て替えていくということが県民の理解を得られるのか?それより神戸市の元町エリア全体を俯瞰したような、大きなグランドデザインを描いたうえで庁舎の整備や駅前のにぎわいをどう取り戻していくかを議論することが必要だとの声があると斎藤氏は述べ、県庁舎の再整備事業を凍結した。
その建て直しの中止で1000億円の予算削減を実現した。そしてその資金を上述の井戸県政の隠れ負債の返済に充てることを目指していた。
庁舎をコンパクトにする一方で在宅勤務の普及に合わせたコスト削減も狙った。県職員労組はリモートワークを利用して職員数の削減を進めるのではないかとの懸念が広がった。
土木系の職員OBを天下り先として受け入れてきたゼネコンは巨額の庁舎建設が凍結されるなら県庁OBを受け入れてきた意味がなくなると不満を募らせた。
斎藤氏が進めようとした改革は井戸県政下で築かれた既得権益にメスをいれるものとして多くの県民に支持される方針であった。
ただし、兵庫県の保守的な風土で20年にわたって形成された権益に対して、一期目でありながら急激に改革を推し進めたことで、改革のスピードと規模があまりにも早すぎたようだ。
コメント